日本とアメリカの医療比較

魔法の言葉、「胸が痛い」

 

こんにちは!

今日から10月、2020年もあと3か月ですね。

NYも少しずつ涼しくなってきていて、時に寒い日も。

そんなNYの夫の働く病院の救急外来でのお話です。

アルコール依存症のボブ(仮名、ホームレス)は救急外来の常連で、しょっちゅうアルコール中毒となって救急車で運ばれてきます。

その日もいつものように「道端で寝ていた」という通報で外来に運ばれてきたボブ。

状況からアルコール中毒と明らかで、血圧や心拍数などのバイタルサインが安定していれば、基本的に血液検査などせずに外来のベッドで寝かせて様子を見ます。

数時間してそろそろアルコールも抜けたかな~という頃に、研修医の夫が「どうですか?そろそろ帰りますか?」とボブに尋ねました。

「・・・う~~ん」と寝ぼけまなこのボブ😪

すると「・・・そういえば・・・胸が痛い気もする・・・」。

・・・・・・・・・・

いやいや、さっきまで気持ち良さそうに寝てたやん!!!(-_-)/~~~

心の中ではそう思う夫ですが、そう言う訳にもいかず、「胸が痛いんですか。どの辺ですか?押すと痛いんですか?」と診察。

「いやいや押すと強くなる痛みじゃないんだよ、なんだか締め付けられる痛みで数時間前からあるんだよ」と、まるで心筋梗塞などが疑われるような供述をするボブ

胸痛の原因は色々ありますが、絶対見逃せないのは心筋梗塞や大動脈解離などなど。

そういった心血管系疾患の有病率が高いアメリカ、何もせずに帰してしまい本当に心筋梗塞などであった場合、間違いなく訴訟で負けるので、病院としては検査せざるを得ません。

そうなると血液検査、心電図、胸部レントゲン検査を行い、しかも心筋梗塞を診断するための血液検査は通常の血液検査より長い経過を見る必要があるため、さらに数時間病院にいることは確定😫

その間、寒い路上ではなく病院の温かいベッドでゆっくり眠れるのです(しかも夫の働く病院にはサンドイッチなどの食事が余っており、もらえることも多い)。

もちろんボブの話は本当だったのかもしれませんが、彼が夫の働く病院だけでなくほぼ毎日様々な病院の救急外来を受診している状況を考えると(NY州の病院は電子カルテを共有している)、確信犯の疑いが濃厚でしょう。

「胸が痛い」はボブにとって唱えれば温かいベッドと食事が提供される魔法の言葉なのです(その他、「息切れがする」「血を吐いた」など)。

ボブ、賢いやないかい・・・!と変に感心してしまうプー子なのでした。

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